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インプレッション 『ノー・ディレクション・ホーム』 [Blu-ray & DVDコレクション]

いやあ、それにしてもすごい時代になったものだ。
きのうはdisc-1しか見ていなかったからまだ冷静だったが、きょうつづけてdisc-2を見て、完全にぶっ飛んでしまった。
まさに「Everybody must get stoned !」な映像である。

では簡単なインプレッションをお届けしよう。
(きょうは画像が14枚です。よしなに…^^;)

disc-1は1966年のヨーロッパ・ツアーから5月21日の英国ニューカッスルにおける「ライク・ア・ローリング・ストーン」の衝撃的な映像から始まる。

   
   (黒のテレキャスがかっこいい)

いうまでもなく、このドキュメンタリー・フィルムのタイトルは、『追憶のハイウェイ61』に収められたこの曲の歌詞の一部から採られている。
しかし、「帰る道がない」というタイトルは、歌詞とはまた別の、決然とした意思の感じられることばに変化しているように思われる。

フィルムはディランのインタヴューをベースにしながら、ミネソタの田舎町で過ごした少年時代からニューヨークへ出て時代の寵児になり、バイク事故によって活動を休止するまでを、貴重な映像を織り交ぜながら描いていく。

   
   (TVショウで「風に吹かれて」を唄うディラン)

ぼくはそんなにディランのことを詳しく知らないので、びっくりするような話が多いのだが、全体を通して感じるのは、かれが自分の作る音楽と同じぐらい自覚的に、音楽の世界でうまく身を処してきたということだ。

たとえばデビュー前に、友人の家からレコードを400枚ほど黙って持ち出したことが(まあつまり、盗んだってことね^^;)あるらしいのだが、そのことについても
すごく貴重なレコードなので、ぼくみたいな孤独な音楽の探求者にはぜったいに必要なものなんだ
と平然と言ってのけたり、

   

「朝日の当たる家」のコード進行をデイヴ・ヴァン・ロンクから拝借して、許可をもらえなかったのに1stアルバムに収録してしまったり…。

   

もちろん、ウディ・ガスリーに心酔してかれを尋ねて行きそこで唄ったり、その後継者といわれたピート・シーガーとともに行動したり、若者らしい純粋な面もいろいろ出てくるのだが、意外に食えない若者だったらしい(笑)ところがおもしろかった。

     
   (貴重なウディの演奏シーン)

インタヴューにはアル・クーパーやリアム・クランシー、マリア・マルダーといったミュージシャンのほかにも、プロデューサーのボブ・ジョンストン、マネージャーでプロデューサーでもあったハロルド・レヴェンタールなど多くの人々が登場する。

   
   (リアム・クランシーは唄も歌いだすほどの入れ込みよう^^)

当時インドから帰国した詩人のアレン・ギンズバーグが「はげしい雨が降る」を聴いて泣いてしまったと語るところなども感動ものだ。

   

2ndのジャケットで有名なスーズ・ロトロもデビュー前後のディランのようすを楽しそうにしゃべっている。

   
   (相変わらずチャーミングなのにびっくり!)

そして63年のニューポート・フォーク・フェスティヴァルでジョーン・バエズのゲストとして出演しながら、聴衆のこころを鷲づかみにしてしまったシーンでdisc-1は終わる。

   

disc-2
ところがバエズとの蜜月時代は長くはつづかない。
JFKの暗殺、ヴェトナム戦争の泥沼化のなかで空前の政治的季節を迎えていたちょうどそのころ、ディランはプロテスト・ソングを唄うのをやめてしまい、ロックの世界に近づいていくのだ。

   

周りのことなんかおかまいなしに、自分のやりたいことだけをやる。
いっしょに仕事をするにはじつにいやな人
」とバエズは語っている。
それでもディランとは現在でも精神的に繋がっているようなバエズの美しい表情が印象的だ。

   
   (「ライク・ア・ローリング・ストーン」セッションの思い出を語るアル・クーパー)

ぼくは今まで「裏切り者」という聴衆の野次を、「フォークを捨ててロックに入っていった」ことへの失望という意味でしか考えていなかったが、その背景にはフォーク・ミュージックに付随していた「公民権運動や反戦といった政治的な姿勢を見せなくなってしまった」ことがあったのだということにはじめて気づいた。

1965年7月25日の伝説的なニューポート・フォーク・フェスティヴァル、マイク・ブルームフィールド(g)やアル・クーパー(key)をしたがえたステージで、野次と怒号とブーイングのなかで「マギーズ・ファーム」等を演奏するシーンは、見ていてこちらも疲れてしまうような緊張感に満ちている。

   

そして最後は……。
フォーク界のプリンス、若者の代弁者というレッテルを貼られ、ツアーのたびに繰り返されるマスコミの、無遠慮で無意味な質問にしだいに疲れていき、ついにライヴをやりつづける気持ちが途切れそうになった66年、5月17日マンチェスター公演。
7年前の『ブートレグ・シリーズ第4集 ロイヤル・アルバート・ホール』で収録されたときに、こんな音源が残っていたのか!と驚愕した
ユダ(裏切り者)!
お前を信じないぞ、嘘つき!
という伝説のやり取りが、なんと映像で見られるのだ!

   

「でかい音でやろうぜ」といいながら「ライク・ア・ローリング・ストーン」の演奏が始められる。
バックはのちにザ・バンドと名乗るホークスだ。

いやあ、ほんとうにすごい映像の連続である。
まだ特典映像は見ていないのだが…もう怖ろしいほどだ…(笑)。

最後にギターの話をひとつだけ。
いろんなギターが登場するが、いちばん気になったのがこれ。
トップの装飾や指板のインレイから、おそらくジョーン・バエズが所有していた00-45だろう。 

    

このギターは1938年に製造が中止され、再発されるのは70年代に入ってからだから、当時もうすでにヴィンテージだったはずで、今だったらおそらく7~800万円はするだろうなあ^^;


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MASA

私、アルバムは何枚か持ってるし映像関係では「DON'T LOOK BACK」は一応観たことありますが、ディランはどちらかというと不得意でどうものめり込めないアーティストです。そんな私でもこのDVDは発売前からちょっと気になっていたのですが、遼さんのこのインプレを読んでやっぱりますます気になりました(笑)。貴重な映像も満載みたいですね。
う〜ん、思い切って買おうかな〜^^。
by MASA (2006-06-25 22:50) 

parlophone

MASAさん、どうもです。
やっぱりディランは詞ですね。
ぼくも詞が理解できないといまいちピンときません。
ですからぼくは日本盤の歌詞対訳を見ながら聴いたりします。
そういう意味ではブルース・スプリングスティーンとディランってやっぱり近いと思いますね。

でもこのドキュメンタリー・フィルムは、歌詞の世界を抜きにしても、映像と証言でディランのデビューから活動休止までがきちんと理解できるように作られています。
オススメですよ!
by parlophone (2006-06-25 23:21) 

Refugee

遼さん

私、あんまり影像派じゃないんで、このDVD知らなかったんですけど、良さそうですね。
ディランは、かなり好きなんで、買ってみましょうかね。

プロジェクター導入したら、思いっきり影像派に転向しちゃいますかね?(笑)
by Refugee (2006-06-26 00:03) 

Refugee

影像じゃなくて映像ですね。失礼しました~(^^;
by Refugee (2006-06-26 00:05) 

parlophone

Refugeeさん、どうもで~す。

>私、あんまり映像派じゃないんで、このDVD知らなかったんですけど

「Seeing is believing」という諺がありますけど、
まさにそのとおりです。

なぜ英米でディランがこれほどまでにもてはやされたのか、
その秘密が明らかになってますね~。
ぜひぜひのオススメです。

>プロジェクター導入したら、思いっきり映像派に転向しちゃいますかね?(笑)

そうでもないとは思いますが…^^;
by parlophone (2006-06-26 00:59) 

pink island

 遼さん、こんにちは。

うわー、凄い人たちが出てますね。デイヴヴァンロンクまで出ているなんて、DVDほしくなりました。『自伝』を読むと、時代の寵児にまつりあげられて、自宅にまでファンに押しかけられ、なんでもかんでも自分のせいにさせられるのに疲れてしまい、軽い事故だったのにこれ幸いと、引きこもってしまったディラン。

こういうのも優れたアーティストの宿命なのかもしれませんね。
by pink island (2006-06-26 21:59) 

hamakaze_ataru

遼さん、こんばんは。
字幕版待った甲斐ありました!何度、amazonから字幕なし買おうと思ったことか・・・・
インプレッション見てるとドキドキしてきます。あと、ギターを見てるだけで幸せになれそうです。プリウォーの45、ゾクゾクします。あと、やっぱ黒いテレ、カッコイイです。カポがらしいですね。早く全編見たいです!そして字幕しっかり読みたいです。
by hamakaze_ataru (2006-06-26 22:02) 

parlophone

>軽い事故だったのにこれ幸いと、引きこもってしまったディラン。

え゛~~っ!!
そうだったんですか!
今まですごい重傷だったんだと思ってました。
騙された~~^^;
by parlophone (2006-06-26 23:22) 

parlophone

>プリウォーの45、ゾクゾクします。
>あと、やっぱ黒いテレ、カッコイイです。カポがらしいですね。

そうか!
大安洋行さんもギターをお弾きになるんでしたね!^^

むかし日本のフォークの連中がエレキにカポつけてるの見て、ほほえましいなあと思ってたんですが、じつはディランのマネだったんですね(笑。

ぜひ大安さんもご覧になって感想をUPしてください。
コメントしに伺います^^
by parlophone (2006-06-26 23:30) 

MORE

ディランはファンというよりも小学6年生の時に『時代は変わる』の
LPを(正確にはボブ・ディランVol.4)買ってしまったとんでもない野郎な私です。
もちろんこのDVDはUSアマゾンでプリオーダーして速攻手に入れました。
驚いたことの一つはマリア・マルダーがあんな頃からディランと接触があって歌っていた、という事実。
アル・クーパーのLike A Rolling Stoneセッションの話は説得力あって面白かったですね。
あの頃のディランのセッションの映像なんて出てきたら鼻血ブーでしょうねー。(爆)
ディランの凄さって一言では言えませんが、ロックを(ポピュラー・ミュージックを)流行歌から脱皮させるキッカケを作った功績は多大だと思います。
by MORE (2006-06-27 14:25) 

parlophone

>ディランはファンというよりも小学6年生の時に『時代は変わる』のLPを
>(正確にはボブ・ディランVol.4)買ってしまったとんでもない野郎な私です。

げえ~、MOREさんおいくつ? (←いきなり失礼で申し訳ありません^^;)
まるでみうらじゅんのようですね。

ぼくがはじめてディランのアルバムを聴いたのは71年ぐらいかなあ。
お正月にお年玉で『NEW MORNING』を買って、よく聴いてました。

>あの頃のディランのセッションの映像なんて出てきたら鼻血ブーでしょうねー。(爆)

ああ、もう悶絶でしょうね~。
マイク・ブルームフィールドにアルにディラン…。
見てみたい~~!!

>ロックを(ポピュラー・ミュージックを)流行歌から脱皮させるキッカケを作った功績は
>多大だと思います。

もうおっしゃるとおりだと思います。
by parlophone (2006-06-27 23:20) 

lonehawk

遼さん、こんばんは。
遅れ馳せながらブログ開設1周年おめでとうございます。
皆さんもおっしゃられていますが、一年間で20万アクセスというのはかなりの数字ですね。
毎回楽しみにしておりますが、特に紙ジャケとアナログとの検証記事は、ワタシのようなアナログ末期世代には非常に参考になります。
これからも楽しみにしてますよ!

で、本題です。
ワタシも今日ようやくこのDVDを観ることが出来ました。
この作品を観ると、後にディランが出した『ナッシュビル・スカイライン』や『セルフ・ポートレイト』のような異色作品が何故生まれたのかのヒントが見えたような気がします。
事故後の雲隠れをキッカケに、それまでのパブリック・イメージからの脱却を試みたのでしょうか。
でも意外とディラン本人は何も考えてなくて、ただ思ったことを衝動的に作品にしただけなのかも。
まだまだディランに関しては謎ばかりですね。
(だから常に興味の対象でもあるのですが。)
by lonehawk (2006-07-02 18:31) 

parlophone

lonehawkさん、どうもありがとうございます。

>『ナッシュビル・スカイライン』や『セルフ・ポートレイト』のような異色作品が
>何故生まれたのか
>それまでのパブリック・イメージからの脱却を試みたのでしょうか。

なるほど…。
事故直前のディランは作り上げられたパブリック・イメージにかなりウンザリしているようすでしたからね、これをきっかけに今までのものをいったん壊してみようという気持ちはあったかもしれませんね。
とてもおもしろい仮説だと思います。

そういうつもりでとくに『セルフ・ポートレイト』を聴きなおしてみるとおもしろいかもしれませんね。
ありがとうございました^^
by parlophone (2006-07-02 22:41) 

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